金融リテラシー研究所

金融リテラシー・レポート

ディスクロージャーと金融リテラシー

スリム化した目論見書は、本当に投資家の役に立つのか?

2010年09月13日
 投資信託のディスクロージャーのあり方に大きな変化が訪れた。2010年7月1日から今後1年間ですべての投信の交付目論見書を、投資家に必要な情報を簡易にまとめた新しい目論見書に切り替えていくことになったのだ。
 投資家視点からディスクロージャーを問い直す、今回の改正で目論見書はどのように変わったのか? 投信の運用会社、販売会社はどう対応していくのか? 関係者に話を聞いた。
(1)〝読めない〟目論見書から〝読んでみたい〟目論見書へ
三菱UFJ投信
ディスクロージャー部 部長
井上靖氏

情報をどれだけ絞り込めるか? 

 目論見書の大幅な改正――。数十ページから時には100ページ以上にも及ぶ、長くて読みづらい目論見書を極端に縮めて、わかりやすくする。交付目論見書に記載していた内容はいずれも重要事項だ。情報過多とはいえ、当初は情報を大胆に削ることに、不安や戸惑いの声も上がった。

 「委員会のメンバーが〝これは書かなくてよいのか〟という、ボーダーラインに挙げる情報が数多くあった。それを一つひとつ残していては簡素化にならない。思い切って本当に必要な情報に絞り込むという方針が固まった」。投資信託協会が運用会社や販売会社と組織する専門委員会のメンバーの一社として参画し、業界内の規則制定やひな型の設定に携わってきた三菱UFJ投信でディスクロージャーを担当する部長の井上靖氏は、そう振り返る。

 従来の目論見書は、一般的な個人投資家の許容量をはるかに超えた情報量で、「できれば読みたくない」内容だった。そのため、重要な情報まで伝わらない可能性があった。それを「これなら読んでみたい」と思えるものに変えていく。さまざまな意見を吟味した結果、記載内容は
 ①ファンドの名称②委託会社等の情報③ファンドの目的・特色④投資リスク⑤運用実績⑥手続・手数料⑦追加的情報――に集約され、A4サイズで「おおむね10ページを超えない程度」の冊子に収めるという金融庁の考え方もパブリックコメントの中で示された。

 改正を進めるにあたっては、金融庁から投資信託協会に「投資家にとってわかりやすく、利用しやすくなるように、投資家目線に立った改定をして欲しい」との指示があったという。政府からの力強いエールを後押しに、投信業界も動いた。投資家のリテラシーや情報の許容量からディスクロージャーを標準化しようとする動きは、投信販売にとって画期的な変化だといえる。

「投資家視点」のディスクロージャー

 「今回の改正で、投資家に対してどう情報提供するか、その枠組みが明確になった」と井上氏は指摘する。『ファンドの特色』の前に『ファンドの目的』という項目が置かれた点もその一例だ。「従来はファンドの特色から始まっていたが、まず、その投資信託は何を目指すのかを投資家に伝える。次に特色として、運用手法や運用プロセス、投資対象、投資制限などを記載する。どのような順序で情報を得られれば、投資家が商品を理解でき、投資判断をしやすいかを考慮した結果が、記載内容には現れている」

 また、新しい目論見書では、『投資リスク』と『運用実績』をできるだけ見開きページで掲載するようにしている。目論見書の改正に先立って開かれた金融審議会ディスクロージャー・ワーキング・グループで、消費者の立場から「リスクが発生したとき、(基準価額が)どうなるかを投資家に知ってもらうべき」という指摘を受けたためといわれる。「リスクは、あくまで基準価額の変動要因であると考えて、リスクの説明と運用実績を見開きにすれば理解しやすい。今回の改正は、投資家にとってわかりやすい情報提供の仕方を見直す非常に良い機会になっている」(井上氏)

 スリム化した目論見書が本当に使いやすいかは、実際に使用しながら検証していくことが必要だ、と井上氏は話す。同社では今後も、販売会社へのヒアリングを継続し、投資家や販売会社のリアルな意見を吸い上げていくという。


交付目論見書『三菱UFJグローバル・ボンド・オープン(毎月決算型)』の表紙

中面では、投資リスクと運用実績を見開きで展開。わかりやすさに配慮した。

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